筆塗り塗装の極意


 マスターグレードをストレートに組んでもある程度の色分けがされていると言っても、カラーリングされている完成品の質感とは雲泥の差があります。雑誌で紹介されている作品のほとんどは、エアブラシを使用して塗られていますが、正直始めるまでには多額の投資が必要で大きな決心が必要です。かく言う私も全ての塗装を筆塗りで行っていました。最近ついにエアブラシを購入したのですが、今までの集大成として、RX−79BD-3を題材にすべての塗装を筆塗りで行うテクニックを紹介します。題して、「誰も紹介しない筆塗りの極意」です。


 ◎ 筆

 広い部分を塗るための大き目の平筆と小さい平筆。インナーパーツを塗る筆。メタリック塗料のための筆。カメラアイなど細かい部分を塗るための面相筆の最低でも5本をお勧めします。
 また、メタリック塗料を使用した後の筆は、どんなに綺麗に洗っても完全に洗えず、後にホワイトなどの淡色カラー塗装時に金属粉が混入する事が避けられません。筆は分けることをお勧めします。余裕があるならホワイトと、他のカラーも分けるとベストです。

 筆の選び方ですが、安いもので構いません。毛の柔らかい物を使いましょう。硬いと、筆返しをした時に塗装面を荒らしムラを作る原因になります。ただ、安物は粗悪品が多いですから、左のように毛を反らせて根元からすべての毛がなるべく同じ長さに生えているものを選びましょう。揃っていないとこれまた塗装面を荒らしてしまう可能性が高くなれます。多少短い毛が混ざっている場合は、カッターなどでそろえます。

 私が使用している筆は、左から、ホワイト専用広範囲用平筆、ホワイト用平筆、ブルー広範囲用平筆、ソリッドカラー広範囲用平筆、ソリッドカラー用、ソリッドカラー用面相、同じくソリッドカラー用面相、淡色用面相の8本を、今回塗装色と前回塗装色によって使い分けております。例えば、クリアグリーンを塗ったとします。その後同じ筆でブラックを塗り、イエロー若しくはホワイトを塗ろうとした場合、綺麗に発色するまで何度も筆洗いしなければなりません。どうしても使用しなければならない場合、よく洗った後、筆先だけを使用して塗ることです。洗いきれない塗料は、根元に残りますから。

 

 ◎ 塗料

以前は、筆ムラが起き難いエナメル系を使用していましたが、ガンダムなど原色系を使用する回数が増えるにつれ徐々にラッカー系に。そして、現在は、アクリル系をメインに用途毎に使用しています。雑誌等では、「アクリル系はラッカー系に比べて発色が良くない」と言われていますが、艶艶に塗らないのであまり気になりません。
 先日、アクリルカラーを買いに行ったら驚きの発見がありました。

 なんと、ビンが小さくなっているじゃないですか!値段も¥200から¥120に。エナメル系も¥120に・・・不況の波でしょうかねー・・・ずいぶん長いこと模型から遠ざかっていたものだと実感しました。ガンダム系1/100の場合、旧タミヤアクリル塗料1ビンで足りていたのですが・・・
 因みに、筆塗りの場合、1.5から2倍に薄めて3回塗りで仕上げることを目標とします。アクリル系塗料を薄める場合、タミヤX-20A特大サイズ(250ml)が便利です。GSIクレオス アクリルカラーを薄めることが可能です。(10年前は可能でした。多分今でも・・・)
 ご存知だと思いますが、アクリル系塗料の特徴として用具を水で洗うことが可能ですが、水で塗料を薄めることはできません。また、水で洗った直後の筆でペイントするとわずかな水分が塗料に混ざり粒粒が発生してしまいます。塗装作業中筆を洗う場合はアクリル溶剤を使用しましょう。


 さて、なぜ筆ムラとは・・・それは、塗装皮膜の違いによる発色の違いや表面の凹凸を言う訳ですが、発生の原因は、大抵、塗料が濃い為に広範囲にわたった塗装時に乗せた塗料が均一に広がる前に乾燥する事から起きます。と言う事で、広範囲に塗装する場合は塗料をできるだけ薄め、何度もの重ね塗りが必要になります。また、ムラになりにくい塗装順序で塗ります。
 今回ブルーディスティニーの塗装を紹介しようと考えておりましたが、ここ最近の寒波によりgoodFitingパーツ作成法によるポリパテの十分な乾燥に2日かかり処理が遅々として進まぬことと、筆ムラを起こしやすい広範囲の塗装が少なく参考にしにくい事から、イエローサブマリン柏店のPratsParadiseを利用して購入したMGキュベレイ左パーツ塗装を紹介します。(GP02号機の核防御シールドが作例としては望ましかったのですが、¥700と高価だった為変更しました。あのシールドは流石の私もうまくぬれるが不安でした。いずれお見せします。)
 ビビル事はありません。紹介の方法ならば練習など不要です。エアブラシを始める前に一度はお試ください。


 左肩です。でかいですねー。この様な上下左右の区別のない曲面パーツはヒジョーに難易度が高く教材にはもってこいです。

 話が変わりますが、パーツを仮組みしていて一旦組み合わせたパーツが容易に分離可能な事に気がつきました。これならパーツ同士の差込を甘くする加工が不要です。助かった・・・


 具体的に塗料はどのくらい薄めるが、重ね塗りを考えるとできるだけ濃いほうが望ましいでが、約2〜2.5倍、3回塗り程度の薄さが適当です。これ以上薄くすると、塗料の表面張力が強く表面に凹み溝のあるパーツ塗装時に塗料が集中し溝を浅く曖昧にする原因になります。また、パーツの淵に塗料が乗りにくくなり下地が透けてしまいます。小さなパーツから塗装し、大きなパーツ塗装前迄に好みの濃度に調整しましょう。


 では、始めましょう。塗料はアクリルを使用します。キュベレイはホワイトがベースですが、残念ながらホワイト系は微妙な色ムラが写真に写り難い為ブルーを使用します。さまざまな塗料を微量ずつ混合する場合には多めに作っておきます。2度と同じ色が出せなくなると困りますから。因みに艶あり塗料より艶なし塗料のほうがムラが起き難いようです。また、塗料を原液で使用した場合、エナメルがムラになりにくく、アクリル、ラッカーの順にムラになり易いようです。つや有り塗料はつや消しよりもムラができやすいようです。

 ***ポイント@ 塗装順序***
  淵から塗り始め、パーツの広い方向に対して平行に塗るべし。重ね塗り2回目以降は1回目より多量の塗料を筆に含ませて塗り、濃度は1回目と同じ若しくは薄くすべし。


 まずは、ご覧のように淵から塗り始め、パーツの広い方向に塗っていきます。(左下写真参照)が、大失敗しています。塗料が濃いためかなり色ムラが目立ちます。もっと薄くする必要があります。しかし、この程度の色ムラであれば、あと2回塗るうちに目立たなくなります。本来2回塗り後の色ですね。筆はできるだけ大きく毛の柔らかい平筆を使います。
 この時、塗料の泡が表面に残らないように注意しつつたっぷりと塗料を含ませ手早く全体に広げます。筆に含まれている塗料が減ってくると泡が生じやすくなります。筆先だけを使用し、端から端に筆を走らせたら塗料をつけるようにします。塗料濃度の薄さからくる表面張力を利用して均一に広げるわけです。

 ***ポイントA 筆遣い***
  筆には多目の塗料を含ませ塗ると言うより乗せるを意識して筆を動かす際に発生する泡に注意して塗るべし。

 2回目以降は、1回目よりさらに多量の塗料を筆に含ませて塗らないと、筆のすべりが悪くムラができ易く、また、泡が発生しやすくなります。塗料ビンに筆を入れたらビンの淵で筆を払わずに塗るくらいで丁度良いです。垂れが発生した場合は、極力やさしい筆遣いで慣らします。塗料を多めに含ませておけばムラが発生せずに周りに馴染みます。

 写真一番下が4回目終了後です。全体のムラが無くなり、弱い艶が広がっていることが分かるでしょうか いかがです?

さて、途中で話題にした、ガンダム試作2号機の盾と足です。綺麗にぬれてますよね。
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